57: 異邦人さん 2006/12/26(火) 18:39:32 ID:Fxf2x6JO
イタリアに行ったときのこと。
研究旅行で、どうしても行きたい田舎の町があった。
ミラノから電車に乗って、小さな町で降りて、
そこからタクシーでもっと小さな町に行く予定だった。
でも、電車を降り、タクシー会社の看板を見つけて電話したら、
あいにく今日は休みだと言われた。
そうか、復活祭の日って田舎はタクシー休みか!やられた!と頭を抱える。
どうしても行きたかったけど、日程的にもう一度来ることはできない。
諦めて帰りの電車を待とうと、
時刻表を確認しに駅に戻ったら、黒人に声をかけられた。
「アナタ、ニホンのヒトですカ」
まさにこんな感じの片言で、にこやかに話しかけてくる青年。
まさかこんなところで日本語を聞くとは思わず、びっくりしたが話してみる。
彼の日本語では会話は少し難しく、伊語6:英語2:日本語2の割合で話す。
セネガル人の彼は昔日本で働いており、今でも兄弟は青森にいるらしい。
「どうしてこんなところに来たのか」と聞かれたから、理由を話した。
そうしたら、「その町の名前は聞いたことがある」
と言って駅の地図を一緒に見てくれた。
「ああ、ここなら近くまで行ったことがある」とイタリア語でつぶやいたのち、
「アナタを、助けること、できるかもしれない」と片言の日本語で彼は言った。
車で仕事の帰りに駅に寄った彼は、
私を町まで車で連れていってくれると言った。
正直、女ひとりで知らない男の車に乗るのはためらわれたが、一か八かだ。
私は腹を決めて、彼の車に乗った。
58: 異邦人さん 2006/12/26(火) 18:53:37 ID:Fxf2x6JO
彼はいろんな話をしながら、
私の行きたがっていた町まで連れていってくれた。
しょっちゅうそこらへんを歩いてる人に道を聞きながら走って、
ようやく町の中に入れた。
町の中に入ったはいいけど、
その中のある人の墓地と家を探さなくちゃいけない。
それで、また道をそこらへんを歩いてる人に聞いてまわった。
道を聞いた人はみんないい人で、
私も彼も伊語を流暢に話せないと知ると、
とてもゆっくり、わかりやすい言葉だけで話してくれた。
それでも小道が多くて迷っていると、
カブに乗った青年が先導して連れていってくれた。
どうにかまず、墓地について、必要な写真をとることができた。
撮らなきゃいけないお墓も、彼が一緒に探してくれた。
それから家も探してくれて、そこの写真も撮ることができた。
道を聞いた人みんなにお礼を言い、
車に乗せてくれた彼にもお礼を言った。
駅まで送ってもらう途中に彼が日本のお茶が好きだと話していたので、
日本に帰ったらお茶を送る約束をした。
59: 異邦人さん 2006/12/26(火) 18:55:26 ID:Fxf2x6JO
帰ってから、思いつく限りの種類のお茶の葉(緑茶とかほうじ茶とか…)と、
ティーバッグと、一口サイズの羊羹を送った。
全部に賞味期限をイタリア語で書いた。
一週間くらいして、
小包がついたと日本にお礼の電話がかかってきて、久々に話した。
本当にいい人だった。
またいつか会おうと約束して、折りにふれてハガキを書いてる。
今年もクリスマスと新年を祝うカードを出した。
「外国にいる外国人は大体みんな何かに困っている。僕もそうだ。
いろんな国で働いたけど、その都度いろんな人に助けられた。
だから、困ってる外国人を見たら助けるようにしているんだ」
彼が言っていた、一生忘れないようにしようと思う言葉の一つです。
長くなってごめんなさい。どうしても書いておきたかったので。
引用元: https://love6.5ch.net/test/read.cgi/oversea/1156432950/
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